妖怪シリーズ:金縛り

今回の妖怪は、妖怪それ自体というよりは妖怪による現象についてです。金縛りは中世西洋の迷信に似ていてとても面白い話です。これは医学的には睡眠麻痺と言われています。ヨーロッパでは睡眠麻痺は悪魔の仕業だと考えられていていて、時にはそれはサキュバス(眠っている男を犯す女の悪魔)やインキュバス(眠っている女性を犯す夢魔)だとされ、また時にはそれは汚いゴブリンであり眠っている人の胸の上に乗っているともいわれていました。きっとこの有名なJohann Heinrich Füssli氏によるThe Nightmareという絵をご覧になった事がある方もいらっしゃるとおもいます。

Johann Heinrich Füssli - The Nightmare

Füssli’s The Nightmare

日常的に睡眠麻痺になる人(私は背中を下にして寝ると毎回なります)は金縛りによる恐怖や悪魔の仕業とされていた事も納得がいくであろう。

これは非常に恐ろしく、人は幻覚を見ているような経験をする。例えるならホラー映画に出ているような気分である。

金縛りはレム睡眠の時に生じると言われており、脳は半分夢を見ているが眼は開いていて外界の状況を知ることができる(夢の中にいる感じではあるが)。自分の部屋は見えるが、布団の中に自分が深く深く沈んでいっているように見え、音も聞こえるのであるが音は壊れており自分の呼吸の音すら自分の中で悪魔がうなっているように聞こえるのである。確かに呼吸しているのであるが息ができないと感じたりし、パニックに陥る。そしてさらに、睡眠麻痺のためにまるで箱の中に閉じ込められたように身動き一つする事ができないのである。これは非常に恐ろしく気味の悪い体験である。

Kanashibari

Kanashibari (金縛り)

金縛りにまつわる話は、ヨーロッパと同じように大昔に遡る。西洋と同様に、まだ科学的な根拠のなかった時代にはこの現象は何か不可思議な力が身体に加えられたものであると考えられていた。しかし西洋とは異なり、日本ではこの現象は悪魔によるものだけではなく様々な要因が関連付けられており、そして面白い事にそれぞれ異なった金縛りの理由があるのである。

最も多く見られる金縛りは、とり憑かれる事によっておこるとされている。今月始めの方で紹介した犬神は人にとり憑くものであると紹介したが、その他とり憑く妖怪としては, や, などがあり、それらは“憑き物”とも呼ばれる。これらの妖怪に憑かれた者は油っこい食べ物や赤飯が食べたくなるといわれ、また金縛りにあうともいわれていいる。

これら憑き物に憑かれてしまった場合は山伏(修験者)によって除霊してもらう事もできるそうだ。

枕返しにも金縛りの話がある。枕返しは座敷童子と関連付けられている事が多く、 ある言い伝えによると胸の重みを感じて目覚めると胸の上に小さな子供が座っていて、金縛りにあっている間に枕を足元に持って行ってしまうのだという。単に枕を移すだけならそれほど人を傷つける事はないが、これに関しても多くの言い伝えがあり中には人を殺めるものまであるという。

興味深い事に、金縛りは妖怪によって引き起こされるだけではなく人間によってもおこされるのだといわれている。安珍・清姫伝説によると、 清姫は一目ぼれした僧侶・安珍を追いかけ、気づいた安珍が熊野権現に助けを求めたのだという。そこで清姫は金縛りにされ、その隙に安珍は逃げ出したのだが、後に金縛りの解けた清姫は蛇身となって安珍をとり殺してしまったのである。このような伝説にもあるよう、金縛りは一つの術の類でもあったのである。

より現代に近い時代の金縛りにまつわるストーリーは、学校に現れるヨジババの話しである。(学校にまつわる話といえばトイレの花子さんも有名である。)この話では、午後四時ごろに学校の特定の場所に行くとどこからともなく老婆が現れるという。この老婆にまつわる話は学校によって異なり色々な説があるが、子供を異次元に連れ去ったり鎌で切りつけたり、攻撃の前に金縛りにあわせたりするといわれている。

最後に、私の一押しの金縛り話である岩手県に伝わる幽霊話しだ。ある日男が寝ている間に目覚め金縛りにあった。そして何かに布団から引きずり出されていると気がつくや否や、そのまま川に落とされそうになったのだ。なんとかして金縛り状態から抜け出すと、中年の女が天井に上がっていったという。それは幽霊であったのだ。

私がこの話が好きな理由は、これが私の大好きな映画「呪怨」の一場面を思い出させるからです。もし怖い物好きで心臓の強い方でしたら、この一場面を見てみて下さい。

良い夢を!


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妖怪シリーズ:金縛り” への2件のコメント

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